3月1日に放送された「たかじんのそこまで言って委員会」は中々見応えのある内容だったと個人的には評価しています。
 
元々、やしきたかじんさんが大好きだったので、この番組も欠かさず観ていますが、今回のテーマは「再考裁判所」。
過去の最高裁判決について、レギュラー出演者に加え、元地裁裁判官、元地検検事(現衆議院議員)そして弁護士がコメンテーターとして、主として、第一審判決を覆した最高裁判決の妥当性を議論するという番組構成でしたがいつもより比較的(?)高尚な感じのする議論だったと思います。

その中で私が注目した最高裁判決について、人事的視点で考えてみたいと思います。
その判決とは「マタハラ訴訟」です。
この話は長くなるので、2回に分けて掲載したいと思います。


当該マタハラ訴訟の概要

  • 広島の病院に理学療法士として勤めていた原告女性は、職場において管理職である「副主任職」に就いていた。
  • 第二子の妊娠に伴い、他の軽易な業務への転換を会社(病院)に申し出た。(※労働基準法では、妊娠中の女性が請求した場合には、会社は他の軽易な業務に転換させなければならないと定めています)
  • 会社はこの申し出を受け、原告を他の職場に異動させたが、この際、原告女性を副主任職から一般職へ「降格」させた。この女性は渋々ながらもその異動を受け入れた。
  • 育児休業を終え、原告女性は職場に復帰したが、その後も元の副主任職に任じられることは無かった。(この理由について、会社は原告女性が復帰した職場には既に副主任職が業務に従事しており、複数の管理職を置く必要が無かったからと述べている)
  • この会社の措置に対し、女性は以下の訴えを行った。①この降格異動は無効であるとして、管理職であることの地位確認と本来の手当支給 ②当該措置は不法行為であるとして、これに対する損害賠償請求
  • この提訴について、第一審の広島地裁、第二審の広島高裁ともに会社側の言い分(通常の人事権の行使)を認め、原告の訴えを棄却した。
  • しかし、最高裁判所は高裁の決定を破棄し審理を高裁に差し戻した。その理由は当該措置は、妊娠あるいは出産をきっかけとして労働条件に関し不当な取り扱いを行うことを禁止した男女雇用機会均等法に反するというものである。

この最高裁判断についての私見

さて、この最高裁の判断に対し、私見を述べます。
私は法律の専門家ではありませんが、人事部門業務の専門家としてその視点で考えてみたいと思います。

(1)妊娠・出産の女性に対する事業主の措置に対する考え方について

最高裁は、「妊娠・出産に伴う軽易な業務への変更は、そもそも「強行措置」であり、つまり働く女性に対する措置としては当然の行いであり特別なものではない。これに際し、不利益な取り扱いを行うこと自体が違法である」としています。

但し、次の2点に該当する場合は除くとしています。
  1. このような異動が行われることにより労働者が受けるメリット・デメリット、あるいは異動に関する趣旨を事業主がきちんと説明し、労働者がその自由な意思により降格を受け入れた場合(その合理的理由もセットで必要)。
  2. 降格させずに軽易業務に異動させた場合に会社に生じる、円滑な業務運営への支障など特段の理由が見受けられる場合。

今回の判例は、1については、原告女性は渋々受け入れたと主張していることや、2については、本件の異動は「円滑な業務運営への支障」には該当しないことを理由とし述べ、結果、原審(高裁判決)を覆すこととなりました。

<ポイント>
事業主や人事部門は、妊娠・出産に伴う軽易な業務への変更は当然のことであるという認識を持たないといけない。



(2)軽易業務への転換に関する考え方について

前述の通り、「妊娠・出産に伴う軽易な業務への変更は、そもそも「強行措置」であり、つまり働く女性に対する措置としては当然の行いであり特別なものではない。これに際し、不利益な取り扱いを行うこと自体が違法である」と述べています。

この判断は、事業主そして人事部門にとっては大変衝撃的であると言わざるを得ません。

この裁判が報道された時、ネットでは
  「会社が求める役割を果たせないのなら、降格になっても仕方ない」
  「役職にはそのまま留まり、仕事だけ軽くしてもらおうなんていうのは自分勝手すぎる」
などの意見が多数ありました。
このような意見を最高裁は否定したことになります。

さらに、今回の異動措置について、そもそも今回の異動は軽易な業務への変更と言えるのかどうかという疑問を指摘しています。
確かに業務内容を詳細に比較するといくつの違いは見られるが、明らかに軽易な業務に転換したとまでは言えないと述べています。

<ポイント>
事業主や人事部門は、このようなケースで職位異動させるのであれば、明らかに軽易な業務に転換したと言える合理的理由を示さないといけない。


(3)この会社の「副主任職」の業務に対する見解

「部長から副主任までを管理職として定めており手当も支給しているが、会社はこの職位がどれほどの権限を持った仕事であるかを明確にしておらず、したがって、複数の副主任が同じ職場で勤務することについてどれだけの非合理性があるかも不明確である。と最高裁は指摘しています。

この会社において副主任という名の職務を精査した場合、労働基準法が定める管理監督者のように明らかな重要性・明らかな権限を持った職務とは言い難く、したがって、同じ職場に複数存在してもそれほど支障があるとは思えないのに、原告女性を副主任に復帰させなかったことは違法と最高裁は指摘しています。

なお、これは間接的に「名ばかり管理職」への指摘とも受け止めるべきと考えます。

<ポイント>
管理職の定義や職能資格制度に対する非明確性に対しての間接的指摘がなされた。(制度を理由にした労働者に対する不都合な取り扱いに対する間接的指摘)

(この話は、次につづきます)


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