壁は決して高くない
「かかりつけ薬剤師」としての役割を果たすためには、例えば疑義紹介などを確かに行っていくこと。
これは薬剤師としての義務ともいうべき業務ですが、しかしこの事については医師との間に壁があり、そのことに悩んでいる薬剤師が多いことも事実。
前回はここまで触れてみました。
今回は、この壁を乗り越えていくための課題について考えてみたいと思います。
結論から言うと「タイミングへの適応」「事前準備」「コミュニケーション方法」「事後フォロー」の4点に絞られると考えます。
同様の意見はWEB上でも語られています。
「タイミングへの適応」
まずタイミングへの適応です
これはコミュニケーション手法というより根本的な問題なのかもしれません。
医師の診察時間と薬局に処方せんが持ち込まれる時間が重なることは多いため、ここで疑義紹介すべき事態が生じて悩んでしまう薬剤師も多いのではないでしょうか。
すぐに医師からの回答があるとは限らないので、患者さんを待たせてしまう可能性が高いわけです。
しかし患者さんは待つのを極端に嫌います。
実際、薬局での不満経験の第一位は待ち時間です。
実際、薬局での不満経験の第一位は待ち時間です。
しかも、どれくらい待ってもらえれば医師からの回答が届くのかは全く分からない。
患者さんの自宅近くの薬局であれば別ですが、それ以外の場合、「また来てください」とは言えない。
したがって待ってもらうしか無いのですが、医師を急かすわけにもいかない。
この段階で患者さんがもう結構ですということも多いらしい。
ここで、対医師、対患者という両方への適切な対応が必要になります。
このような事態に直面して「面倒だから疑義紹介しない」という薬剤師はいないことを信じていますが、もしこのような事態が疑義紹介を躊躇する原因になっているのだとすれば、やはりコミュニケーションの技術を学び駆使する必要が出てきます。
「事前準備」
続いて事前準備です。
何を確認するかを明確にしないまま疑義照会を行って医師を苛立たせる例が少なくないようです。
これは、WEB上で紹介されている疑義紹介における医師たちの不満事例として明らかです。
ビジネスの世界では、コミュニケーションの前に「シナリオを立てる」ことは当たり前です。
特に上司への確認、上申などの場合は、相手の出方をできる限り事前に想定した上で、自身でシミュレーションを行い、最終的に自分のプランを承認してもらう「フォロワー」としてのスキルを磨かなくてはなりません。
このビジネスの視点を受け止めてほしいと思います。
このことも改めて触れてみたいと思います。
「医師との話し方手法」
3つ目は医師との話し方手法、つまりコミュニケーションスキルです。
医師にはプライドが高い方も多く、言い方ひとつで臍を曲げてしまうケースも多いようです。
実際に薬剤師さんからはこの点をよく聞きました。
実際に薬剤師さんからはこの点をよく聞きました。
ただでさえ難しい医師との会話ですが、これを電話越しでやらなくちゃいけない。
普通、電話でのコミュニケーションはFace to Faceと異なり、難易度はさらに増します。
普通、電話でのコミュニケーションはFace to Faceと異なり、難易度はさらに増します。
一方、どのような言い方が相手に受け入れられるのか、満足な研修教育を受けずにきた薬剤師さんにとっては超え難いハードルであるようにも思えます。
マナーや接遇に関しての研修を行っている薬局チェーンはあるでしょうが、「アサーティブ・コミュニケーション」のテクニックまで踏み込んで研修を行っているところはごく僅かでしょう。
私がサポートした薬局チェーンも医療や薬剤に関する学会や研修へは積極的なのですが、薬剤師のコミュニケーションスキル向上に対してはお世辞にも積極的であるとは思えませんでした。
しかし、かかりつけ薬剤師としての機能転換のためには絶対に必要なスキルだと思います。
「事後フォローの徹底」
最後は、事後フォローの徹底です。
疑義照会を行った後、結果としてどのような対応をしたのか。
これを行わない(つまり医師と顛末を共有しない)ことには疑義照会の効果も半減するのではないでしょうか。逆に医師の不信感を招くことに繋がりかねません。
ビジネスの世界ではPDCAを徹底して行うことが求められます。
この事後フォローはまさしくPDCAのCとA、つまりCHECK&ACTIONであり、業務の完遂のためには不可欠な要素です。
私はこのことについて、やはり薬剤師の世界にも「ビジネスマネジメント」「ビジネスコミュニケーション」のスキルが必要になっているのではないかと考えます。
これは大変重要なテーマであり、このスキル開発を提案したいと思っています。
ただ、ひとつ言えることは、PDCA発想で業務を進めること、そしてビジネスコミュニケーションのいずれも決して難しい課題ではないということです。
第6話のまとめ
これらを改めて整理してみると、医師とのコミュニケーションの壁を乗り越えるためには、
「まずはタイミングへの適応をしっかり行い」
「準備を万全にしてから疑義紹介に臨み」
「話し方スキルを身に着け、そしてコミュニケーションの際には特段の注意を払い」
「事後フォローを確実に行う」
これらを確実に行うことが必要であると考えられます。
これこそが「かかりつけ薬剤師」としての役割をしっかり果たすことの前提条件であり、またこのスキルを獲得することが医師の医療パートナーとしての薬剤師の地位が確立していくのではないでしょうか。
そして結果としてそれは患者さんへの提供価値に繋がっていくわけです。
これには薬剤師の一層の努力を期待したいところです。
薬剤師の皆さんは、継続して薬剤に関する知識、調剤の技術を学ぶことも重要です。
しかし、それだけではなく、そして接遇やマナーというレベルでもなく、「ビジネスマネジメント」「ビジネスコミュニケーション」という意識を持ち、そのスキルを高めていくことが求められると思います。
しかし、それだけではなく、そして接遇やマナーというレベルでもなく、「ビジネスマネジメント」「ビジネスコミュニケーション」という意識を持ち、そのスキルを高めていくことが求められると思います。
疑義紹介への対応を中心とした薬剤師の役割をいかに果たすかという問題提起はここで一旦終わります。
ここまで長い話にするつもりはなかったのですが(苦笑)
次回以降は、「薬剤師の社会的地位(を上げなければならない)」と「薬剤師のマインド(の変化を期待する)」というテーマで続けていきたいと思います。
(つづく)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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