薬剤師は「先生」か?

医師に対し「先生」と呼ぶ人は多くても、薬剤師に先生と呼ぶ人はどれだけいるでしょう?

そもそも先生とは、広義には知識や経験が豊富で、他の人を教えて導く人のことを指します。
その定義は別にして、医師に対する畏敬の念が彼らを先生と呼ばせることに違和感はありません。

では薬剤師に対してはどうでしょう。

薬剤師の薬に関する知識は医師を超えることは珍しくなく、その点では、前述の「知識や経験が豊富で、他の人を教えて導く人」という定義に照らせば、薬剤師が先生と呼ばれても何らおかしくはないのですが、それは極めてまれな事です。

ちなみに薬剤師同士で先生と呼びあったり、あるいはメーカーあるいは問屋の営業担当やMRなどが薬剤師に対し先生と呼んだりすることはありますが、それは背景が異なります。(営業的表現という意味です)

薬剤師だけの話ではありません。
医療の世界で先生と呼ばれるのは医師だけで、看護師や技師も先生と呼ばれることはありません。
それは、看護師などは医師による医療業務の補助者(一般にはコ・メディカルと呼ばれる)であるという認識からであることは明らかです。

薬剤師が先生と呼ばれることがないのは、医療という行為に関してはあくまで医師が主役であって、薬剤師はその他のコ・メディカルと同様に補助者である認識を世間に持たれているからに他なりません。



世間が自然と先生と呼ぶ、薬剤師はそんな存在であるべき

医師に対する呼称である「先生」は、自然に世間が勝手にそう呼んでいるのであって、医師自身がそう呼ばせているのではないわけです。

コ・メディカルの薬剤師ではなく、かかりつけ薬剤師。
そんな存在になれたとき、薬剤師は自然に先生と呼ばれるのだと思います。


しかし、現段階で薬剤師に対し医師と同様の信頼感を持ち、「健康相談」「多剤併用の解消」「残薬問題の取り扱い」など、自身の健康を委ねようとする患者がどれだけいるのか、という疑問はぬぐいきれません。

また「医師の補助者」に対し、700円(実質は210円)ものサービス料を払ってまで、「かかりつけ薬剤師」になってもらうことのメリットを社会的に価値化できているとは思えません。

但し、これは薬剤師の努力により解決可能な課題であることは言うまでもありません。
事実、信頼度バツグンの薬剤師さんがいることも事実です。(実際、私はその経験者ですから)

ただ、知り合いの薬剤師がいるから聞くだけであって、近くの調剤薬局の薬剤師さんを頼ろうとは全く思いません。

言いたいことは、患者さんから「先生」と呼んでもらえる薬剤師は、薬剤師が自ら作り上げていく必要があるということです。



かかりつけ薬剤師に対する労基法の壁

これを実現していくために乗り越えなければならない障害について意見を述べていこうと思います。

一つは、24時間対応など、「かかりつけ」としての機能を果たしていくためには、「労務管理」と「人件費」という壁があります。

「かかりつけ医」の多くは開業医であり、オーナードクターです。
オーナーの場合、労基法の適用は受けませんから、24時間でも365日でも仕事することに問題ありません。

一方、薬剤師の多くは被雇用者です。被雇用者つまり労働者である薬剤師が24時間の対応を行うということは、法的にも現実的にも極めて難しいと言わざるを得ません。

就業形態別

<労働基準法第九条>
この法律で「労働者」とは,職業の種類を問わず,事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で,賃金を支払われる者をいう。

つまり、医師であれ、薬剤師であれ被雇用者であれば労働者の扱いを受けるわけであり、労働をさせたのなら賃金を支払う必要があるということです。
患者さんからの要請があれば、即応しなくてはならず、そのような状態で勤務させていれば、それは休憩ではなく勤務時間として取り扱われることは当然だと思います。

例えば、企業の管理職はブラック企業でもない限り、一般には労基法上の「管理監督者」という位置づけにあり、これは労働時間管理の適用を受けないとされています。簡単に言うと、残業手当も休日出勤手当も支給されません。

しかし、それを補って余りある賃金(一概には言えませんが筆者の経験上、少なくとも年収800万円以上と見込んでいます)を安定的に支給されているケースが多いのですが、現在の薬剤師の平均年収は500万円程度です。
管理薬剤師でその1割増くらいでしょうか。

その程度の賃金で、24時間対応させることには労基法上の問題が生じると予想します。
そもそも、薬剤師自身がその程度で満足するとは思えません。



かかりつけ薬剤師の背中を押す法整備と適正な労務対策を

薬局のオーナーたる薬剤師であれば問題ありませんが、被雇用者である薬剤師を「かかりつけ薬剤師」として24時間対応させるとなると、その時間に相当する賃金を支給するしか方法はありません。
監視断続勤務の適用は、薬剤師にはできませんから。

細かい計算はしませんが、現実的にありえるのだろうかと思います。

環境整備を疎かにして、かかりつけ薬剤師制度が浸透拡大することなんてあり得ないと思います。環境整備の不備は労働意欲を低下させる衛生要因そのものですから。

この部分の法整備や雇用者である薬局経営者さんの労基法など関係法規に則った適正な対応をお願いしたいところです。


さて、この「かかりつけ薬剤師」の話。
ここまで長く書くことになるとは自分自身でも思いませんでした。
次回を最終回にしたいと思います。

(つづく)


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。 
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