本題とは別の話ですが、諭旨解雇の場合の退職理由について

本当の意味での自己都合退職と、諭旨解雇処分を受けた場合の退職とは、雇用保険支給の取り扱いに差が出ます。

前者は、手続き後3か月後から、後者は上手くいけば7日後からです。

この事を理由に、専門家の中には「離職票の退職理由は、雇用保険以外の目的に利用されることはないので解雇処分、つまり会社都合として手続きを進めるべき」と述べ、解雇されたとして支給申請をすべきと言う人がいます。

建前はそうかもしれませんが、対面上それを嫌う人は少なくありません。

最終的には、どうするかを本人が決めればいいと思います。

しかし、再就職を目指す際、履歴書には「前職場を自己都合退職した」と書いたものの、面接官から「退職理由を記した退職証明書を前の職場からもらってくること」を要求された場合、どうしますか?


前の職場は事実を書く必要があるので、自己都合退職なら自己都合退職と書くでしょうが、雇用保険の保険金支給の手続きの為に諭旨解雇という会社都合で進めたならば、そう書くのではないでしょうか。

このことは懲戒解雇処分と同じ問題をはらんでいます。


結論から言うと、「見覚えがある諭旨解雇」の場合は、下手なことを画策しない方が得策です。

確かに雇用保険の支給の取り扱いに差はあるかもしれませんが、長い目で見ると再就職の道を自ら閉ざしてしまう可能性がある以上、リスクが高すぎる。と私は思います。




公務員の懲戒処分の現状と犯罪の現状から見えるもの


総務省では、地方公務員(都道府県、市区町村、一般事務組合や広域連合などの職員)における懲戒処分について統計調査を行っていますが、年度によって多少の差はありますが、年間で4400〜4500件くらいです。

職員の母数は274万人ですから、懲戒処分発生率は約0.16%となります。つまり1万人単位では16件ということです。

さらに懲戒免職(民間では懲戒解雇)になる人は、懲戒処分総数の約1割強ですから、同じく1万人単位では2人弱ということになります。


総務省

※上表は総務省のHPからの引用(平成26年度の調査)


私の人事部門在職中の記憶を辿れば、これだけの発生率は無かったと思います。
制裁処分総数で上記の半分程度でしょうか。解雇(免職)となれば2年に1件あるか無いかだったと記憶しています。

何名かの知り合い(企業の人事部門責任者クラス)に聞いてみても、やはり地方公務員における懲戒処分の発生件数は民間より高いのでは無いかと思われます。

さて論点は地方公務員の不祥事の現状ではありません。


上記の通り地方公務員の懲戒免職処分の現状と、民間における発生率を重ね合わせて類推すると、懲戒解雇(免職)の発生率は概ね0.01%程度かと思われます。

つまり、年間で見て1万人に1人ということでしょうか。


一方、視点を全く変えて考えてみたいと思います。
刑法犯罪の発生率はどうでしょうか。




再犯率の高さから推測すること


検察庁の調査では、一般刑法犯罪の認知件数は約180万件で、我が国の人口を母数に考えてみると0.015%となります。

奇しくも(?)懲戒解雇発生率とよく似た数字になりました。


ちなみに、一般刑法犯罪の内訳ですが、これも検察庁調査からの引用ですが窃盗が50.9%と最も高く、次いで自動車運転過失致死傷等(31.2%)となります。

この二つで8割を超えるのですね。ちょっと驚きました。



一方、懲戒解雇処分を受けることになった背景・理由については概ね以下が該当します。

労政時報社の統計では業務上横領(使い込みを含む)、飲酒運転、死亡交通事故、性犯罪(痴漢など)、無断欠勤、職権を濫用した汚職(賄賂、不適切な謝礼受領など)、機密漏洩等が懲戒解雇要因の主たるものですが、後4項目は職場内秩序を乱したことに伴う就業規則違反を問われてのものとしても、前3項目は一般刑法犯罪の項目とも通じるものがあります。


このように見ていくと、懲戒解雇の要因とは刑法犯罪で検挙される内容と酷似している様に思います。

ここで、一般刑法犯罪の再犯率について見てみたいと思います。

犯罪白書などによると、一度でも罪を犯した人が生涯において再度あるいはそれ以上の回数の犯歴を持つ率は実に40%以上に上る様です。


この数字を示すことと懲戒解雇処分を受けた人が再就職を困難にすることとは無関係ではないと思っています。


つまり、雇用主としては、「懲戒解雇と処分を受けるような悪質な就業規則違反を起こす人は、また同じことをやらかすのではないか」という漠然とした不安を持ってしまうという事です。

再犯率のデータをこのケースに一律に当てはめることの是非を問われると、それは不適正な考えであることは理解できます。

しかし、たとえそれが根拠の無い思考であったとしても、結果懲戒解雇処分(諭旨解雇を含む)を受けた人を雇いたくないという雇用主の心理を一方的に批判することは無責任だとも思います。

(つづく)

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